機材ネタ 「双眼鏡のお話①」  
     左の少々お疲れ気味の双眼鏡は、ここ10年以上も、管理人がお仕事で使いたおしていたもので、ニコン社の初代モナークシリーズの10×42D CF、口径42mmの10倍の機種です。実売が福沢諭吉先生が3人ちょっと。当時、欧米でトレンドのコンパクトなダハ型、窒素ガス封入の防水、常用できる中堅機種という打ち出しで、「おおっ!、ニコンもこういうの出したか…」と思って、補正の効いた歪みのないフラットな視界と最短合焦距離だけ確認して即買いしたのを憶えています。

 なんだかんだ言ってるうちに、フィールドで良く見かける人気シリーズになっちゃいましたから、まあ、素性の良いコストパフォーマンスのあるシリーズだったと思っています。もう廃版機種ですが、良いレンズを使った後継機種が少しお値段アップで発売されているようです。
 
 売出しが2002年の春頃だったと思うので、かれこれ13年も故障知らずで勤め上げてくれた双眼鏡で「どうもお疲れ様でした。」と謝辞を述べておきます。と言っても、別に光学系がトラブっているわけでもなく十分見えるのですが、まめに手入れもせず、お気楽に扱っていたからと言うのでもないのでしょうが、外装のラバーがボディから浮いてブカブカしてきましたし、目当ても原因不明の変形が生じてきています。管理人はご存知のように万事大雑把で適当な人間ですが、さすがにイラっとくるように(笑)なったので、2015年春、現在、後釜を物色中です。

 ちょっと、ニコン社のよいしょ記事みたくなりましたが…。管理人は野鳥の業界?の人なので、双眼鏡は商売道具ってことになります。管理人の業界のお偉いさんのなかには、以前から野鳥の観察に欧州メーカーのツァィスやライカの上級機種を使っている方がおられましたし、近頃はスワロフスキーも人気が高まっています。実際、管理人が機嫌よくつかっていたモナークも、そういった上級機種に比べると色収差や他の収差はあります。つまり、色のにじみや像のボケや歪みのことですが、無論、普通に野鳥を観察する上で支障になるというレベルではありませんが、言い換えると「少々モヤっと感」があるということになるのでしょう。これはニコン社のみならず、各メーカーの中堅機種なども同様の状況だと思われます。
 ここら辺でお断りしておかねばならないのは、本稿で管理人がお話しているのは、一般に野鳥の観察に使用する双眼鏡だということです。管理人も博物館や美術館、イベント等に持って行くなら口径20mm前後のコンパクト機を使用しますし、星を観る趣味の方は明るさ優先でもっと大口径の双眼鏡を使用されるかも知れませんね。野鳥業界(笑)のお方でも、タカ渡り関係の方は三脚・雲台に装着して使用するような機種を使う人もいます。

 話が横にそれますが、自動車でお話すればいいのでしょうか、たとえばF1ですが、自動車の基本性能の「走る」「止まる」「曲がる」を究極に追求したものではありますが悪路では使えませんよね。だからと言ってF1は駄目な車だと言う人はいません。オートバイのオフロード車で高速道路をブッ飛ばすとかなり怖い目に逢うと思われますが、オフロードバイクは欠陥車だと言う人もいませんよね。要は開発コンセプトの問題となります。双眼鏡だって、まあ、市場とすれば小さなものなのでメーカー各社とすれば「ビギナーからベテランまで、いかなる用途にも幅広いユーザー層のニーズにお答えします…」な~んて事いいたいのはわかりますが、なんでもそうですが「向き不向き」というのはあります。逆に、特に双眼鏡に多いともいえませんが、「これって、どんな開発コンセプトで作ったんだろ?」という機種も無いではありません。

 長々と、また極端な比較になってしまいましたが、双眼鏡って、一定レベル以上の品質をクリアしたメーカー品であれば、これが良くってあれが駄目ってわけでもないのですが、こと野鳥観察に使うというのであれば、「何でも良いや」とも言い切れません。野山で距離があり、すばやく動く野鳥が対象ですから、解像感も視野の広さも求められるし、朝夕や逆光など光線の条件に恵まれない状況での使用も考慮しなければならないでしょう。また、光学要素のみならず、天候に恵まれなければ防水性も無視できませんし、長時間の使用や携帯性を考えれば、軽量さとかバランス、ホールディングの良さにもこだわりたいところです。そういった意味で、野鳥観察に持っていく双眼鏡こそ、一定以上の機能レベルをもち、総合力に優れた機種が求められるのではないでしょうか。
 
 ビギナーさん向けの記事・解説で、バードウォッチングの三種の神器ならぬ「バードウォッチングに必要なグッズ」として「双眼鏡」「図鑑」「ノート」とあるのはみなさん良くご存知でしょう。管理人としては、「ビギナーさんだから、最初は安い入門機で…」とは決して思いません。せっかく野鳥を視野に入れられても、双眼鏡に十分な性能がともなわなければ「なんか、良く見えないや~」ってことになりかねませんし、必要以上に大型で重い機種なら「肩が凝って、疲れちゃった~」となるでしょう。まあ、いずれにしても、楽しくないので、野鳥の美しさや可憐さ、野生のたくましさに感動し、自然環境に楽しむってことはむずかしそうです。
つづく