アシナガシギ( 英名:Stilt Sandpiper 学名:Calldris himantopus)
南港野鳥園と夢洲に飛来!!
  
大阪府初記録 

アシナガシギ 南港野鳥園 2021.8.8(黒光和忠)
  ■8月8日の観察報告及び写真(黒光 和忠)                
2021年8月8日(日)の15時31分、干潮で干上がった南港野鳥園の展望塔前の北池干潟に南から低空で接近してきた一羽のシギの着地を目で追うと、強い違和感を覚えた。
折からの強い陽光による大気の揺らぎのため双眼鏡では種の確認ができない。500ミリレンズを付けたカメラのファインダーで見るも識別できず、撮影画像も不鮮明な写りで用をなさないので、野鳥ガイドさんのスコープを拝借して覗く、「これは未見種だ」。
思わぬ出会いを果たしたアシナガシギ(のちに図鑑でその名を知った)は背面にコントラストのある斑模様、そしてメリケンキアシシギのように下腹部まで及ぶ縞模様が目を引き、サルハマシギを思わせる先細りで下向きにカーブした長い嘴や和名の通りの長めで黄色味を帯びた脚など、既知のシギ数種をキメラ状にミックスしたような印象を受けた。
行動としては活発的に干潟を歩き回り、腰の高い体形を活かして水深のある場所へも積極的に入っていく。やはり脚が長い体形ゆえだろう、採食時は深い前傾姿勢で足元をつつく。羽繕いの様子も見せてくれ、白い腰も視認できた。
少し目を離した際に飛ばれてしまい見失ったものの、30分ほど経過して西池干潟で再発見。このときは付近にカルガモがいたのみで、他のシギ類と行動を共にしているようには思われなかった。やがてアシナガシギは葦の向こうへ消えていき、そのまま見失った(16時45分)。   
 報告者プロフィール:黒光和忠(くろみつ かずただ)
高校在学中より野鳥観察を開始。しばらくの中断後、2000年頃から野鳥観察を再開する。2008年頃から南港野鳥園をメインフィールドとして活動中。

  ■アシナガシギについて
本種は北アメリカの北部で繁殖し、南アメリカで越冬する。日本では迷鳥として飛来し、これまでに8例(1977年7月:愛知県、1970年代:福岡県、1983年9月:小笠原群島南島、1987年8月:東京都、1992年8月:愛知県、1993年7-8月:北海道、2004年:茨城県、2015年9-10月:茨城県稲敷市(幼鳥))の報告がある。
本例は9例目で近畿では初記録である(観察者:黒光和忠、青野親裕、加藤遼太、倉富数博ほか)。観察された2021年8月8日は前日から本州の太平洋側に低気圧と台風が複数あり海上は荒れた天気であった。
その後、同一個体がNPO法人南港ウェットランドグループによる夢洲でのシギチ調査時に、夢洲南側の淡水湿地で8月15日(日)に確認され、8月21日(土)までこの場所に滞在していた。翌22日(日)の調査では確認できなかった。夢洲の湿地では中州で休息する姿や、脚の関節部まで浸かるような深い所で採餌行動をとっていた。
・飛来地環境
 大阪南港野鳥園(19.3 ha)は、大阪市の南港埋立地(約1000 ha)の西端(大阪湾奥部)に1983年9月に開園した。湿地エリア(12.8 ha)は、開園後の様々な改修工事により、北・南・西池干潟、汽水池、ヨシ原などで構成され、干潟は護岸から海水の出入りがある。
南港野鳥園では、シギ・チドリ類は本種を含めてこれまでに54種の記録がある。
夢洲(北港南地区:万博予定地)は南港野鳥園の向いにある埋立地で390 haの面積があり、南港野鳥園とともにモニタリングサイト1000シギ・チドリ類のコア調査地となっている。
・観察例の特徴
本例は夏羽で、添付写真に示すように下記の特徴を持っていた。
腹部全域の横縞模様。上尾筒と下尾筒は白色で暗色斑がある。脚は緑黄色で長い。嘴は細長く、先端が少し下に曲がる。頭頂、眼先および耳羽が赤褐色。眉斑は白い。肩羽は黒い軸斑と白く明瞭な羽縁。雨覆いはほぼ一様な灰色。         
          NPO法人南港ウェットランドグループ