揚げるのが遅くなって恐縮ではありますが、先月5/11(日)にNPOの「変わった鳥を出す・・・」と二つ名を持つO崎氏が、「これ撮っといて~」と居合わせたY下さんに撮影依頼したのがこの写真。その時点ではNPO諸氏は「どうせキアシやろ・・・」みたいな薄い反応でその場は流れたんだが…
まあなんだ・・・、キアシシギは春には100羽近くカウントされて野鳥園の干潟を渡っていく子達なんだが、地味さゆえか扱いが雑でmedaichiも含めそんなにシャッタを切られる子達ではありませんW。でも、まあ普段「変な鳥出すO崎君・・・」で通っている彼のことやし~、暇やったので写真を見てみることに・・・
PCで明るさやコントラストを補正して拡大してみると・・・。「あれっ、これメリケンと違う?」となった次第ですが、ああ、メリケンキアシシギですね。となると野鳥園初記録になるのでここは慎重に精査しないといけません。
キアシシギとメリケンキアシシギとの識別点はザックリ言って下の様になります。
①外観・・・ メリケンキアシシギの上面はキアシシギより暗色な灰褐色。下面のより黒い横班は幅広で密にあり、腹部の中央から下尾筒に至る。キアシシギよりでわずかに大きく、足も太い。初列風切が尾羽より突出する割合が大きい。
➁嘴と鼻溝の長さ・・・ メリケンキアシシギの嘴はキアシシギに比べて基部まで黒味が強い傾向でわずかに黄色味を帯びる場合もある。メリケンキアシシギの鼻孔を含む鼻溝の長さは嘴長の2/3に至る。キアシシギの鼻溝は嘴長のほぼ1/2。
③上尾筒の文様・・・ キアシシギの上尾筒には白い羽縁と暗褐色の模様が連続するが個体差は大きい。メリケンキアシシギの上尾筒は僅かな羽縁が見られる程度でほぼ無班でああることが多い。
④声 キアシシギは「ピュイー」メリケンキアシシギは「ピリリリリリィ」とトリル音
で・・・、まず外観なんですが、いくら扱いの可哀そうなキアシシギ君とはいえ、medaichiも写真は撮っていますから画像倉庫をひっくり返して検証してみます。ふむ、上の写真で後追いしているキアシシギに比べて体色は暗く、僅かに大きい ( 手持ちの図鑑ではメリケンキアシシギ26-29cm、キアシシギ23-27cm ) 印象を受けます。下面の横班は黒く幅広で下尾筒にに至るようです。
この写真の様にキアシシギにも暗色に見え、横班が下尾筒にまである個体もいますが、medaichi的には、そういった個体でも横班そのものの幅は細いことが多く、今回撮影された個体の下面の横班は黒く幅広で、メリケンキアシシギの特徴をよく表しているように感じました。
次に嘴と鼻溝( nasal groove ) なんですが、medaichiはメリケンキアシシギの嘴と上嘴にある鼻孔の収まっている鼻溝の写真を持ち合わせておりませんから、以前描いたキアシシギのイラストを胡麻化してイヤ修正してお話しすると・・・。メリケンキアシシギの嘴は概ね黒っぽく、下嘴基部に僅かな黄色味を示すものがいます。鼻溝は上嘴の全長の約2/3に至ります。キアシシギの鼻溝は嘴長さの約1/2ほどです。今回の個体の画像でもその部分がかろうじて確認できて決め手となりました。
もうちょっと重箱の隅・・・じゃなくて細部にこだわってみると、写真に尾羽、上尾筒周辺が写っていました。メリケンキアシシギの上尾筒は羽縁が僅かに白い場合がありますがほぼ無班で、キアシシギの上尾筒は個体差が大きいようですが、白い羽縁の内側に暗色の部分があり、medaichiの怪しげなイラストのようにそれが内側に連続するように見えます。
ん~、この辺りになると「重箱の隅」感半端ないですが跗蹠後面の鱗模様です。 図鑑によっては、「キアシシギの跗蹠後面のウロコ模様は梯子状、メリケンキアシシギの跗蹠後面は網目状である」と書かれているものがあります。鼻溝レベルでない撮影難易度ですから当然medaichiは写真をもっていませんからこっから先は話のネタ扱いWとさせていただきます。
「こんなもん標本でも見んとわからんやろ・・・」とは思いつつ、図鑑「SHOREBIRDS」の解説頁を読むと、それぞれキアシシギについて”the scales on the legs are scutellated”、メリケンキアシシギに”the scales on the tarsi are reticulated”と記述がありました。キアシシギの跗蹠後面のウロコ模様は梯子状ではなく鱗板状・・・、メリケンキアシシギのウロコ模様が網目状・・・でより細かいという意味合いと思えます。写真に描きこんだイラスト様に見えるということでしょう。medeaichiの貧弱な語学力と検証できるような写真を撮れていないということもあり、まあ重箱の隅Wはこの辺にしておきます。
最後に、今回お話しさせていただいたことは成鳥夏羽についてなんですが、メリケンキアシシギの春以外の観察例が少ないのでまあいいかと・・・。今回の個体については、外観大きさ、下面の横班、鼻溝、上尾筒と特徴的なポイントを複数確認できましたので良かったです。野鳥園初記録で一種増やしときます。